
デンマーク・コペンハーゲン郊外バウスベアのノボノルディスク本社(ロイター)
[ロンドン ロイター]デンマーク・ノボノルディスクの新CEO(最高経営責任者)に、国際事業担当エグゼクティブバイスプレジデントのマジアル・マイク・ドゥスタール氏が就任することになった。同氏には、株価低迷と売り上げ成長の不振という2つの課題が課せられるが、投資家は同氏の手腕に懐疑的だ。
米国での経験不足に懸念
8月7日付で社長兼CEOに就任するドゥスタール氏は、イラン生まれのオーストリア国籍で、米国で育った。1992年にウイーン拠点の事務員としてノボに入社した生え抜き社員で、昇進を重ねて米国を除く全世界のコマーシャル部門を統括するまでになった。
ノボのヘルゲ・ルンド会長は7月29日に発表した声明で「われわれは最近の市場の課題に迅速かつ大胆に対処する必要がある」とし、「ドゥスタール氏は、今後の機会を最大限に引き出す明確なビジョンを持っている」と強調した。
ただ、投資家はそこまでの確信を持てていない。ドゥスタール氏には、ノボにとって最大の市場である米国での経験が不足している。糖尿病・肥満症治療薬で競合する米イーライリリーとの競争に打ち勝ち、米国事業の業績回復を目指す上で、ドゥスタール氏の経験不足が障壁になるのではないかと投資家は懸念している。
2021年に肥満症治療薬「ウゴービ」を発売し、時価総額で欧州最大の企業となったノボの株価は、昨年半ばから急落。5月にはラース・フルアーガー・ヨルゲンセンCEOの解任が突然発表された。同社の株価は7月29日も20%以上下落し、約700億ドルの時価総額が吹き飛んだ。
バークレイズのアナリスト、エミリー・フィールド氏は「株価がこれほど暴落すれば、投資家は変化を求める」と指摘。「投資家は新CEO人事に不満を抱いているように感じる」とし、「彼には米国での事業経験がない。私の理解では米国がすべてだ」と話した。
投資家は「がっかり」
かつて6150億ドルを誇ったノボの時価総額は、足元で2400億ドルほどまで落ち込んだ。同社は糖尿病・肥満症治療薬市場で競争激化に直面しており、特に米国で競合品の影響を受けている。これが7月29日の利益予想の大幅な下方修正につながった。
アナリストや報道関係者との電話会議で、ドゥスタール氏は「緊急に」対応を見直す必要があると語った。株価急落については「気に入らない」とコメント。「従業員としても、次期CEOとしても気に入らない。株主である私自身としてももちろんそうだ。しかし、会社を決定づけるのは後退ではない。われわれの対応だ」と述べた。
ジェフリーズのアナリストは、ドゥスタール氏の任命に驚きを示し、外部からの登用を望む声があったことを指摘した。
ノボの株主であるベルビュー・アセット・マネジメントのポートフォリオマネージャー、ルーカス・ロイ氏は「ドゥスタール氏の任命はあまり前向きなことではない」と語った。別の株主であるユニオン・インベストメントのポートフォリオマネージャー、マルクス・マンス氏も「少しがっかりした。人々は外部候補を望んでいた」と話した。
ノボのルンド会長は、社内外の候補者について検討した結果、ドゥスタール氏が有力候補として浮上したのは、同氏が会社の強みと弱みを理解していることが1つの要因だったと指摘。「ドゥスタール氏は、外部から来た誰よりも迅速に課題に対応し、行動を起こすことができると考えている」と述べた。
(取材:Maggie Fick/Jacob Gronholt-Pedersen、編集:Adam Jourdan/Jan Harvey、翻訳:AnswersNews)




 
				


 
								 
								
 
											 
											 
											 
											 
											



